日誌

みんないい!何が?

 次の文章は、ある青年の回想です。(少し語尾を変えてあります)

 広汎性発達障害で友だちができず、集団行動がとれない自分に担任が面談で言ってくれた言葉が「ひとりでも堂々としていられるお前のキャラは、この先、確実に強みになる」でした。また、一人でいることへの批判と同じくらい自分を苦しめてきたのが「強くなれ」という言葉でした。上手に話せない、人の輪には入れない。「弱い」というのは、いけないことだと刷り込まれてきました。担任の「みんなが優しくあれたのは、お前の弱さがあったからだ」という言葉に今までの人生が許された気がしました。

 上記の文章を読んで、皆さんはどう思いましたか。昔は、発達障害という言葉は現在のようにポピュラーではありませんでした。先生方が研修等で勉強し始めてから20年はたっていません。平成17年4月から「発達障害者支援法」が施行されているので、それ以降です。発達障害を簡潔に説明すると、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)など、脳機能の発達に関係する障害です。 発達障害のある人は、他人との関係づくりやコミュニケーションなどがとても苦手ですが、優れた能力が発揮されている場合もあり、周りから見てアンバランスな様子が理解されにくい障害です。

 現在、発達障害に関する本が書店でたくさん並んでいます。それほど、悩んでいる大人や子どもをもつ保護者が多いということでしょうか。私が過去に担任した生徒の中にも、発達障害ではないかと思う生徒は少なからずいました。うまくコミュニケーションがとれないことで悩んでいた生徒も多かったと思います。黒柳徹子さんが発達障害であることをカミングアウトしていることや、「みんなちがって、みんないい」という金子みすゞさんの言葉は、発達障害の子を勇気づける言葉でありました。長所も短所もありのままの自分を肯定する。ただ、発達障害だから全部仕方ないと思ってしまうと進歩はありません。自分にどんな特性があるのかを理解した上で、対策を考えることはできます。人間は社会的動物と言われるように社会と全く没交渉で生きることはできません。個別の色々な特性を理解して、寛容になれることが社会でみんなが幸せに暮らす上で必要なことではないでしょうか。昨今は、SNSの発達で寛容性が失われているような気もしますが、皆さんはどう思いますか。