日誌

弥生の空をか~ざしに♬

 昨日、東京の靖国神社の桜(ソメイヨシノ)の標本木で、桜の開花が発表されました。東京としては統計開始以来、2021年と2020年と並び最も早い記録だそうです。本校の校庭南側の桜は、まだ開花は見られません。入学式には、葉桜になってしまうか、少しは残ってくれているか、今後の天気次第です。22日の合格者説明会の日には、東京では満開の予想ですが、太田は、何分咲きくらいでしょうか。

 さて、日本の春を代表する桜には話題がたくさんあります。今日は桜が日本の国の花になるまでの意外な歴史について少し書きたいと思います。桜は奈良時代の万葉集で歌われており、1300年ほど前には栽培して観賞することが行われていたと考えられています。桜の一番の美しさは、その儚さにあると思いますが、江戸時代まではその散りゆくさまが“死”や“物事の終わり”と結び付けられ、マイナスイメージを持たれていたようです。また、散った花びらは薄桃色からすぐに土気色に変わるため、“心変わり”を意味するとも考えられていました。そのため、桜は縁起の悪いものだと考えられていたのでしょう。桜の散り際のよさから、いつも死に直面していた武士にとっては「潔さ」の象徴と見られていました。それで「花は桜木、人は武士」という有名な言葉が語り継がれるようになりました。江戸幕府が倒された後、桜は封建時代の象徴とされて、欧化政策と廃仏毀釈など日本古来の伝統を否定する運動によって各地の桜の木が伐採されてしまい、多くの品種が絶滅してしまったそうです。昭和になって欧米列強と対峙するようになると、桜は今度は「軍人」とその精神の象徴として復権を果たし、学校に植えられるようになりました。戦後は国の政策でソメイヨシノが全国に広められ、桜の花は日本のシンボルとなりました。

 今年は、上野公園での飲食を伴う花見が解禁されたようで、お花見に出かける人が大幅に増えそうですが、花見は日本だけのものではありません。今や人気の名所となった米国の首都ワシントンD.C.の全米桜祭りには百万人以上の人が訪れるそうです。明治の終わりに友好のあかしとして日本から贈られた桜が始まりというのは有名な話ですね。では、その返礼として1915年、米国から日本に送られた花があることをご存じでしょうか。今では公園や街路樹で多く見受けられるようになった花です。今年で108年、その花とはハナミズキだそうです。校長室の外にもあります。自宅の庭にもあります。

 桜は600種類以上ありますが、日本の国花は厳密には「ヤマザクラ」であり、「ソメイヨシノ」ではありません。あと菊も日本の国花です。皆さんの持っている100円硬貨の表にも桜があります。お札にはすべて桜が描かれていますのでどこにあるのか探してみてください。簡単に桜の歴史を紹介しましたが、みなさんには、この時期、あらためて桜の儚くも美しいところを感じてもらえればと思います。

 日本の自然を代表する植物には、梅・桜・たんぽぽ・菜の花・つつじ・紫陽花・ひまわり・菊・紅葉などがありますが、その中でも桜を歌ったものが断トツに多いようで、千曲以上あるようです。個人的には、森山直太朗さんの「さくら」、いきものがかりの「SAKURA」、AKB48の「桜の花びらたち」「10年桜」、初音ミクの「千本桜」が好きですが、福山雅治、コブクロ、レミオロメン、ケツメイシなどたくさんの有名なアーティストが桜ソングを歌っています。桜の時期は卒業・入学シーズンですが、どちらかといえば卒業の別れをテーマにした歌が多いようです。ですから、AKB48の「10年桜」のような明るい歌は少数派ですね。コロナ禍になってから、カラオケには行けていませんが、今年は気兼ねなく歌えるようになるでしょうか。校歌もマスクを外して、体育館でみんなで歌えるようになることを切に願っています。最後に有名な和歌を紹介します。

「世の中にたえて桜のなかりせば 春のこころはのどけからまし」在原業平 現代語訳「もし世の中にまったく桜がなかったなら、桜の花が咲くのを待ち望んだり、散っていくことを悲しんだりすることもなく、春のひとの心はもっとのどかだっただろうに」皆さんは、どう思いますか。