日誌

ミライを、明るい希望で満たそう!

 今日は、国民栄誉賞の日だそうです。生徒の皆さんの年代だと「国民栄誉賞をもらった人は誰が思い浮かびますか?」と聞かれたら、最近の羽生結弦さんか国枝慎吾さんになるのでしょうか。私が印象に残っているのは、団体として唯一受賞している女子サッカーチームですね。記念日としては1977年の今日、2日前の9月3日に通算ホームラン数756本で世界最高記録を作った王貞治選手が、日本初の国民栄誉賞を受賞したことによって定められました。「広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があったものについて、その栄誉をたたえること」が目的で、これに該当する個人や団体を内閣総理大臣が随時、表彰することとなっています。過去に受賞した人をスポーツ分野と文化分野に大きく分けると、前者が14、後者が13で、多いのはプロ野球選手の4人と作曲家の4人です。芸能関係は俳優4人に歌手2人、冒険家はスポーツ分野に入れ、囲碁・将棋・映画監督は文化分野に入れました。将棋と囲碁は、頭の格闘技なのでスポーツ分野に入れてもいいかもしれませんね。辞退した人は過去に4人います。イチローは3度も辞退しています。昔と比べて受賞年齢が若くなっている傾向があります。このように、明確な表彰基準がなく曖昧であり、表彰分野に偏りがあり恣意的になっているのではないかという疑問もあります。柔道少女を描いた漫画の「YAWARA!」の主人公猪熊柔の祖父猪熊滋悟郎の口癖が「オリンピックで金メダルをとって、国民栄誉賞じゃ!」でしたが、「ヤワラちゃん」の愛称で親しまれた谷亮子さんは柔道選手としてはオリンピックで2度、世界選手権で7度金メダルを獲得しましたが、国民栄誉賞は授与されませんでした。

 スポーツにはオリンピックやワールドカップなどに代表されるように政治利用の影がつきまといます。最近は商業利用の弊害も大きいようですが。ヒトラーのベルリンオリンピックは、国威発揚の宣伝に利用された最たるものであったと考えられています。ボイコットがあったモスクワやロサンゼルスも政治が絡んだ例です。4年に1度ですから、出られなかった選手は気の毒としかいいようがありません。1984年のロサンゼルス・オリンピックでは、大会組織委員会が徹底的な商業主義路線の運営を行い、現在の放映権料やスポンサー料などの高騰を招いたと言えます。

 スポーツの政治利用に関して「スポーツ・ウォッシング」という言葉があります。これは、米パシフィック大学教授のジュールズ・ボイコフ氏がオリンピックを批判する際の論点の一つで、権力者が自分たちに都合の悪いことをスポーツの喧騒で洗い流すという意味です。スポーツの健全なイメージを使って民衆の関心を集め、政治をはじめとする社会問題から国民の不満をそらそうとする手法です。国民の不満を政府から他国に向けてそらそうとする手法をとる国もありますね。

 国民栄誉賞の話が、いつのまにかスポーツの話になってしまいました。「広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があった」という趣旨に反対はしませんが、スポーツのイメージを高め、国民が生涯スポーツに親しみ、心身ともに健康が増進できるような政策を政治家は考えてほしいと思います。生徒の皆さん、自分が明るい希望をもって、スポーツだけでなく、自分の好きなことに打ち込んでください。そして、社会に明るい希望を与えることができるようになれれば最高ですよ。