日誌

2023年5月の記事一覧

言の葉の園生

 何か、最近は「今日は何の日」に頼りっぱなしです。昨日今日と「全国高校長協会」の総会と研究協議会が大宮のソニックシティホールで開催されたので、行ってきましたが、それについて書いても仕方ないので、「今日は何の日」に頼らせてもらうことにしました。今日は「ことばの日」だそうです。2019年に制定された新しい記念日です。日付は言葉の「葉」が5月の新緑の瑞々しさを表しているとの思いと、「こ(5)と(10)ば(8)」と読む語呂合わせから。「ことば」を大切に使い、「ことば」によって人と人とが通じ合えることに感謝し、「ことば」を正しく使って、暮らしをより豊かにすることが目的だそうです。漢字の「言葉の日」ではなく、ひらがなの「ことばの日」としたことには手話や点字など広い意味での「ことば」を知ってもらいたいとの思いが込められているそうです。言葉の大切さについて異論を差しはさむ人はいないでしょう。以下に「言葉」について私が書き留めてきたものを紹介します。皆さんも高校生活を通して、自分の言葉を増やし、大切に育ててください。

〇新約聖書に有名な言葉があります。「はじめに言葉ありき」です。これは、「言葉があるから、人は世界にある全ての物を、認知できるので、言葉は大変大事です。」と多くの人に誤解されている言葉です。言葉の重要性を説いているものではなく、「アルケーはロゴスなり」=「根源的原理は、キリスト(神の言葉)である。」という意味だそうです。言葉の大切さがわかっているから、逆に誤った解釈をしてしまうという皮肉な例です。

〇平安時代前期の『古今和歌集 仮名序』に「やまとうたは、人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける」(和歌というのは、人の心をもととして、様々な言葉となったものである)とあるように、和歌に「言の葉」が使われていました。その後、「言の葉」が多く用いられるとともに、「ことば」にも「言の葉」の意味が含まれていき、「言葉」は言語を表す最も一般的な語となったようです。

〇戦国時代初期の武将の北条早雲の家法と伝えられる「早雲寺殿廿一箇条」に「歌道を心得ていれば、常に出言の慎みがある」とあります。これは、「歌道の心得のない人は、品がない。良く学び、常に言葉遣いに注意しなさい。迂闊な一言で胸中が悟られてしまうものだ。」という教訓です。歌は、きわめて短い言葉で自分の思いを表現しなければならない。そうした鍛錬が、日常の何気ない言葉にも顕れてくるとみていました。

〇口から出た言葉には魂が宿る。例え思っていなくても、「ありがとう」って言えば、「ありがとう」の心が出てくる。言霊(魂)は、よい言葉に宿らせたいですね。

〇古典落語の演目は、前座が演じるか真打ちが演じるかで、おもしろさがまったく異なってくる。話し方や間の取り方によって、言葉はまったく別物になるのだ。

〇言葉が相手に届き、理解されるためには、まず相手の身体に『響く』必要がある。

〇言葉が途切れる沈黙の時間は、語られる言葉と同じくらい人々の心に届いた。

〇社会の変化で辞書に載る言葉は今後も増えていくのでしょうが、日本語の使い手として大事なのは、いかに多くの言葉を知っているかより、使いたい言葉、使いたくない言葉の仕分けがきちんとできるかどうかでしょう。

〇言葉を使うというのは、ある意味で化粧をすることだ。言葉の力をつけるためにも、そして読解力をつけるためにも、一つの言い方ではない、もっと別の表現が      あることを知り、様々な表現を自分のものにすることが大事なのだ。そうすることによって語彙が身につき、読解力がついてくる。樋口裕一

〇人間は言葉でものごとを考えていますから、複雑な思考のためには自在に扱える言葉を増やさなければなりません。

〇自分が発した言葉は、情動を司る脳の奥の扁桃体という部位に影響を与えます。ポジティブな言葉なら、扁桃体もポジティブに反応して、感情が前向きになりますが、ネガティブな言葉なら、反対に感情が落ち込みます。ある心理学の研究では『緊張する』と話した人は『ワクワクする』と話した人より、テストの成績が10%も悪かったそうです。

〇自分の発した言葉で一番影響を受けるのは、実は自分だということもわかってきました。自分の言葉を一番多く聞いているのは、自分だからです。

〇「ことばを育てることは、こころを育てることである。人を育てることである。教育そのものである。」大村はま(国語教師、国語教育研究家)

〇ひとつの言葉でけんかして ひとつの言葉で仲直り ひとつの言葉で涙を流し ひとつの言葉で笑い合う
 ひとつの言葉であたまが下がり、ひとつの言葉でいがみ合う ひとつの言葉はそれぞれにひとつの心をもっている