日誌
2023年2月の記事一覧
忘れてはならぬもの
今日はバレンタインデーですが、その話題はさり気なく避けて101歳の現役最高齢のピアニスト室井摩耶子さんの言葉を紹介します。「私は突然101歳になったわけじゃなくて、一日一日を精一杯生きてきて今があります。だから過去や未来ではなく、今日というこの一日を大切にしたいんです。大切な一日に死ぬ準備なんてしていられないから、終活にも、まったく興味がないんです。」テレビでは80、90歳になっても元気なお年寄りの姿をよく見ますが、みんな一日一日を大切にして年を取ったなりに人生を楽しんでいるのだと思います。「年を取ると、生きるのが仕事」と言っていた人がいましたが、「生きるのが趣味」もいいんじゃないかなと思います。
ナチスの強制収容所で瀕死のユダヤ人の少女が、「こんなにひどい目に遭わせてくれた運命に感謝している」とつぶやいたそうです。何不自由なく暮らしていた時には、これほどまで自分に向き合うことはなかったというのです。「ならぬもの十訓」の一番目に「忘れてはならぬもの…感謝」があります。あなたは、朝目覚めた時に「今日も生きている。ありがたい。」と思ったことがありますか。最近のトルコ地震で、既に1週間以上経過しているにも関わらず、瓦礫の中から子どもたちが救出されるのを見て思いました。
ビューティフルネーム
1875年(明治8年)の今日2月13日は「平民苗字必称義務令」が出され、平民も苗字を名乗ることが義務づけられた日で「苗字制定記念日」となっています。「苗字帯刀」は、江戸時代は貴族と武士の特権でしたが、1870年(明治3年)9月19日、平民が苗字を名乗ることを許可する「平民苗字許可令」が出され、この日は「苗字の日」となっています。ところが、そのころはまだ、明治新政府は国民に信用されていなかったので、苗字を付けたらそれだけ税金を課せられるのではないかと警戒し、苗字をつける人はなかなか増えませんでした。それで「平民も必ず姓を称し、不詳のものは新たにつけるように」と「平民苗字必称義務令」が制定されたのです。日本は世界の中でも苗字の数が多い国で約27万あるそうですが、明治以降に爆発的に増えました。変わった苗字が多いのもそのせいです。苗字を新しくつける(考える?)苦心談も残っています。「小鳥遊」(たかなし)や「春夏冬」(あきなし)、四月一日(わたぬき)、「神風」、「日本」など珍しい苗字はたくさんあります。だから、教員を長年やっていても初めて見る苗字や、読めない苗字はたくさんあります。近年は、それに加えて名前も読めないものが増えてきました。ちなみに、世界で一番苗字が多い国はアメリカで約150万種類あるそうです。移民の国なので世界中の苗字が集まっているのだから当然かもしれません。逆に、お隣の中国は約4000種類、韓国は約250種類と多くはありません。サッカーワールドカップで、韓国代表のゴールキーパーとディフェンダーの全員がキムという苗字で話題になりましたが、韓国では5人に1人がキムさんらしいですね。名前は、人間のアイデンティティですから大事にしたいですね。小学校で、自分の名前には親のどんな願いが込められているのかを聴き取りしてくるという宿題があるところも多いようです。皆さんは、自分の苗字と名前の意味や由来を知っていますか?
走れ!手品師
「道徳」って、皆さんはどんなイメージをもっていますか?小中学校では、どんな教材で教わりましたか?先日見たYouTubeで、道徳の授業についての相談に答えるものがありました。それは「手品師」という教材についてでした。内容を簡単に紹介します。
あるところに腕は良いがその日のパンも買うのもやっとというありさまの貧しい手品師がいた。彼は大ステージを夢見て日々腕を磨いていた。ある日、町を歩いていると小さなしょんぼりとした男の子に出会った。声をかけるとその少年は父親が死んだ後、母親が働きにでてずっと帰ってこないので寂しがっているとのこと。そこで手品師は手品を見せて喜ばせたところ、大喜びしたその少年から「明日も来てくれるか」と問われ「必ず来る」と約束して別れた。その夜、手品師のところに仲のよい友人から電話がかかってきた。その内容は、明日の大劇場で手品が催されるが、予定した手品師が急病のため代行者を探しているというものであり、友人はこの手品師を推薦したという。彼は考える。手品師として世間に認められる千載一遇のチャンスではあるが、そのためには今夜出発しなければならない。だが、明日は少年と交わした約束がある。しばしの葛藤の末、手品師は友人にこう答える。「せっかくだが先約があるので明日は行けない。」そして手品師は次の日、大劇場ではなく一人の観客のまえで手品を演じるのであった。
皆さん、授業でやった記憶がありますか?私は覚えていました。この話の道徳的価値とは何だか、わかりますよね。そう「約束」です。約束を守らない人は信用されません。社会人になれば、なおさらですが、子どもや学生なら許されるというわけではありません。有名な「走れメロス」も約束がテーマですね。高校生の皆さんなら小学生に、この「手品師」の教材を使って、どんな授業をしますか?先生が誘導したい解答ではなく、手品師が少年との約束を守らず、大劇場に行くほうを選んだとしたら、そこにどんな道徳的価値を見いだしますか。実は、この話にはもう一つの約束が隠されているというのです。これは、何か夢を叶えようとするすべての人に共通した約束です。考えてみてください。社会に出ると、学校で勉強するような正解のある問題はありません。人と協働して、最適解を探すのみです。すっきりしない、モヤっとするからこそ、終わりのない勉強が続けられるとも言えます。一方的に教えられたものは忘れてしまうことが多いですが、自分で気付いたことは忘れません。気付くためには、答えをすぐ教えてもらうのではなく悩みながら自分の頭でよく考えることが必要です。この「手品師」の話を道徳について考えられるように、大劇場へ行く話に書き直してもらうとしたら、あなたはどのように書きますか?
医学部出て漫画家
以前に「河童忌」や「桜桃忌」など文豪が亡くなった日について書いたことがありましたが、1989年(平成元年)の今日は、漫画家の手塚治虫が60歳で亡くなった日で、「治虫忌」とも呼ばれ、「漫画の日」となっています。また、1841年(天保12年)の7月17日も、イギリスの絵入り風刺週刊誌『パンチ』が発刊されたとして「漫画の日」とされています。日本史の教科書や図説に載っているので見たことがある人も多いと思います。そして、なんともう1日「まんがの日」があります。国民の祝日「文化の日」と手塚治虫の誕生日に由来して11月3日は「まんがの日」です。手塚治虫は、存命中から「漫画の神様」と称され、代表作に『鉄腕アトム』『ジャングル大帝』『リボンの騎士』『火の鳥』『ブッダ』『ブラック・ジャック』『三つ目がとおる』『アドルフに告ぐ』などがあります。皆さんは、読んだことがあるでしょうか。『ブッダ』『ブラック・ジャック』『アドルフに告ぐ』などは、学校や公立の図書館に置いてあるところも多いと思います。
昭和46年(1971年)から少年ジャンプで少年向けストーリー漫画の新人募集企画として「手塚賞」が開催されています。多くの漫画家を排出していますが、知名度が高いのは、『ONE PIECE』の尾田栄一郎氏、『SLAM DUNK』の井上雄彦氏でしょうか。漫画家を目指している人は、たくさんいるでしょうし、ウェブコミックの隆盛で漫画家の数も昔とは比較にならないほど増えています。しかし、その中で漫画家として生活していける人は、ほんの一握りです。ミュージシャンと同じく厳しい世界です。ストーリーを考え、キャラクターを設定し、絵コンテを描き、下書きをし、ペン入れをし、トーンを貼り、背景を描き、ホワイトを入れて完成まで、小説家と画家、映画監督を一人でこなすようなものです。今はデジタルで作成している人が多いでしょうから、昔よりは修正が楽になっていると思いますが。ですから、『君の名は。』で全国的に有名になった新海誠さんはすごいです。なにしろ、彼が2002年に発表した、約25分のフルデジタルアニメーションの短編『ほしのこえ』は約8ヵ月間部屋にこもりながら、 監督・脚本・演出・作画・美術・3DCG・撮影・編集・声の出演とほとんどの作業を1人でこなし、自宅のパソコンを使って作り上げたものだからです。売れている漫画家は例外なく読書家であり、映画を多く見ているそうですが、つまり面白い話と構成・構図を考えるためには、勉強し続けること、新しい情報を仕入れ、色々な体験をすること、感性を磨くことが必要不可欠だということです。一発屋はミュージシャンだけでなく漫画家にも多いです。それくらい、面白い漫画を作り続けることは非常に困難だということです。スポーツ選手や絵や音楽などの表現者になるには、才能と努力が必要です。好きなことを職業にできることは、非常に幸せなことですが、苦しむことも多々あります。それでも一度きりの人生ですから、覚悟を決めてチャレンジするのもありですね。「医者は生活の安定を約束していた。しかし、僕は画が描きたかったのだ。」という言葉を手塚治虫は残しています。「やらないで後悔するより、やって後悔したほうがよい」という意味の言葉を世界の優れた先人たちが残してくれています。あなたは、どうしますか?
〇〇バイアスの打破!
日本教育新聞の「管理職の独り言」という連載コラムに、「学校バイアスを見直す」というテーマの文がありました。バイアスとは、簡単に言うと「思い込み」です。バイアスと言えば東日本大震災などの災害時にテレビなどで解説される「そんな災害は起こらないであろう」と考えて判断を誤る正常性バイアスと、「他の人も逃げていないから、まだ大丈夫」と考えて逃げ遅れる同調性バイアスが有名ですね。タイトルの「学校バイアス」には、「生徒は学校行事が好き(特に体育的)」や「校則を緩めると学校が荒れる」などがあるそうです(筆者の考えでは)。スポーツが苦手な筆者は、句会や茶会や読書会とかやってくれないかな…と思えど叶わなかったそうです。体育的行事にしろ、音楽的行事にしろ、旅行的行事にしろ、苦手な生徒が一定数いることは否定できません。筆者は中学校長ですが、生徒に「みんなが楽しめる」というコンセプトを伝え、企画を考えさせると、「学校の大人のバイアス」を壊すアイデアが次々出てきたそうです。
皆さんなら、どんな学校行事もしくはクラス行事を考えますか。もちろん、どんな教育的意義や効果があるかを説明できなければいけませんよ。学校生活は、主に授業・学校行事・委員会活動・HR活動・部活動で成り立っていますが、楽しく意義あるものにするには、〇〇バイアスを疑って、自分の頭で考え、みんなで対話することが大事です。近年、話題になっている「女性は理数系が苦手」もバイアスですね。