日誌

榎本校長のつぶやき

SNSは寸鉄だ

 昨日のブログで「笑顔」について書いたばかりなのに、今日書く内容は悲しく、あまり気が進みません。それでも書かなくてはと思いました。

 昨日から、漫画「セクシー田中さん」の作者である芦原妃名子さんが自殺した件について、多くの報道がなされています。今後、後追い記事が出て来てYouTubeでも取り上げられると思いますので、ここで詳細について書くことは控えます。「のだめカンタービレ」の作者の二ノ宮知子さんが自身のX(旧Twitter)で、「辛い…。辛すぎる。」、「自分の作品を一番大事に思っているのは自分なんだと号泣した日の事を思い出して、また涙が止まらない」と発信しました。同じように漫画が実写ドラマ化され、アニメ化された身として芦原さんの気持ちが痛いほどわかるのだと思います。私はこのニュースに接して、フジテレビの番組「テラスハウス」に出演していてSNSでの誹謗中傷が原因で自殺した女子プロレスラー木村花さんが思い出されました。(今回の件はSNS以前の問題でもありますが。)SNSでの言葉のやりとりが原因で、傷ついている人がどれくらいいるのか、自殺にまで追い込まれてしまった人がどれくらいいるかは不明ですが、明らかに通信技術の発達によって生じた負の部分です。

 「寸鉄人を殺す(刺す)」ということわざがあります。意味は、短い刃物で人を刺し殺すことから、短く鋭い言葉で人の急所をつくことです。このことわざは、言葉の力が実際の武器と同じくらいの影響を持つことを示しています。そして、言葉の選び方や話し方がどれほど人の感情や心に大きな影響を与えるのかを警告してくれています。似た言葉でいい意味に使うものに「ペンは剣よりも強し」がありますね。このような御時世ですので、学校では小学校から高校まで、情報モラルに関する学習を毎年しています。しかし、SNSを巡るトラブルは一向になくなりません。そのすべての原因は匿名性と発信の簡単さにあると思います。匿名のものは責任をもって発信していないということで信用しないということが当たり前になればいいのですが、「デジタルタトゥー」という言葉があるとおり一旦世界中に広まってしまったものを消すのは至難の業であり、発信された側としては、対応しないわけにはいきません。ネット上の問題は、法整備が追い付いていないのが現状ですが、早く泣き寝入りする人がいなくなるようにしてほしいです。今のところ、トラブルを避けるためには発信する前に1日待つ。そして、第三者に読んだり見てもらったりすることです。生徒の皆さんも、今後SNSでのトラブルの被害者にも加害者にもならないために十分気を付けましょう。

笑顔のパワー!パワー!パワー!

 今日は、思うところがあって「笑顔」について書くことにしました。令和4年の6月10日に「笑顔の力」というタイトルで書いていますが、再度書きたいと思います。「叶う」「吐く」については、3回話をしましたのが、記憶してほしいことは何度も繰り返すことが大事と言ったとおり、「笑顔」について繰り返したいと思います。              

 まずは有名人の言葉から。〇単なる笑顔であっても想像できないほどの可能性があるのよ。(マザーテレサ) 〇「笑顔は1ドルの元手もいらないが、1000万ドルの価値を生み出す」(カーネギー) 〇笑顔は万言に勝るインターナショナル・サインである (中村天風) 〇「いいことが起きたから笑顔になるのではなく、笑顔だからいいことが起きる」中井俊已(教育評論家) 〇 「笑」という漢字は、万葉集や古事記の時代には「花が咲く」という意味で使用されていた。だから、笑顔は、その人の心の花が顔に咲いたということ。

 笑顔の効用について。〇楽しい感情には、問題解決を容易にしたり、記憶力を高めたり、集中力を高めたりする効果があることが報告されています。笑顔をつくると楽しくなるという逆効果が、私たちの脳にはある。失敗したときは笑いましょう。失敗したときも笑顔でいると、脳がその失敗はなかったように把握するのです。〇怒り顔の人と笑顔の人の写真を用意して、その顔を覚えてもらい、後日同じ人たちの無表情の写真で「この顔を覚えているか」と確認する実験がありました。その結果、実際に覚えているのは、圧倒的に笑顔だった人の顔でした(「笑顔優位性効果」)笑顔でいる人のほうが記憶に残りやすい。〇表情は感情の出力だが、実は入力にもなる。人はうれしいから笑顔になるわけだけど、つられて笑顔になった時には「うれしい時の神経信号」が誘発され、笑顔の時と同じ気持ちになれる。つまり、周囲を笑顔にする人は、自分の表情を周囲に伝染させ、結果、周囲の脳に「やる気と好奇心」を喚起しているのである。当然、その人のチームはいい結果を出す。〇仏教用語の「和顔愛語」(わげんあいご)は、「和やかな笑顔」と「思いやりのある言葉遣い」で人に接することで、人間関係をスムーズにするための知恵です。仏教には、他にも顔施(がんせ)というものがあります。にこやかな表情で人に接するということで、和顔施(わがんせ・わげんせ)ともいいます。〇実に単純な世渡り法は、「笑顔」と「挨拶」と「返事」です。

 いかがでしたか。笑顔の効用の最初の三つは、以前に紹介したものです。社会に出ると、本当に「笑顔」と「挨拶」と「返事」が評価されることを実感すると思います。「笑顔」と「挨拶」と「返事」ができる人は印象に残るので、よく覚えてもらえます。体調が悪い時や精神的に落ち込んでいる時に笑顔を作るのは、難しいかもしれませんが、意識的に笑顔を作ることで回復が早まると思います。(となりのトトロのサツキちゃんとメイちゃんがお父さんと一緒にお風呂に入っている時の笑いのように) 病院にこそ笑顔が必要であり、疲れていても笑顔で接してくれる看護師さんに助けられている患者さんも多いでしょう。落語会を開催している病院もあります。マスクをしていると笑顔が見られません。皆さんもコロナやインフルエンザ感染に注意しながらも、マスクを外せる時は外して笑顔を見せてください。

心も体も温まりたい

 最近、寒い日が続いていますね。インフルエンザよりも今は感染力の強いコロナが流行していますので、皆さん予防に気を付けください。暦の上では、2024年の大寒は1月20日(土)で、2月3日(土)の節分までの15日間が「大寒期」とされていますので、寒いのも仕方ないかもしれません。寒いとこたつやお風呂が恋しくなりますね。毎月26日は風呂の日です。先日の朝のテレビ番組の特集で草津温泉が取り上げられていました。草津温泉は群馬県が全国に誇る温泉地であり、温泉番付では西の横綱別府温泉と並び、東の横綱に君臨しています。リピーターの数では全国一だそうです。どんな観光施設やレストランなどでもそうですが、リピーターをいかに増やすかが経営を続けられるかどうかの鍵になります。TDLやTDC、USJなどは、その典型でしょう(新しいエリアやアトラクションができるとはいっても料金値上げが続き、前ほど行けなくなる人が増えそうですが)。草津温泉は、王者の地位に胡坐をかくことなく、お客さんにリピーターになってもらえる努力をしてきたようです。「♪草津よいと~こ 一度は~お出で (ア ドッコイショ) お湯の中に~も(コーリャ) 花が咲くよ(チョイナチョイナ)♪」の草津節は有名ですが、高校生の皆さんはわからない人が多いかもしれませんね。私は、日帰りも含めると草津温泉は7回訪れていて、私が訪れた温泉地の中では最多です。スキーとセットで行くことがほとんどですが、若い時は温泉は年寄り臭く感じてそれほどいいものとは思っていませんでした。そして、子どものころは、家族旅行で温泉に行くとつまらないと思っていましたが、今は積極的に行きたいと思っているのですから、年を取ると変わるものですね。皆さんも卒業したら友人と旅行に行くこともあると思いますが、伊香保や万座、水上、四万など全国的に有名なところが多い地元群馬の温泉をぜひアピールして、一緒に行ってみてください。

萬画とは

 昨年の今日は、カノッサの屈辱と謝罪について書きましたが、今日1月25日は漫画家の石ノ森章太郎先生の誕生日ということで、石ノ森章太郎先生について書こうと思います。今の高校生には石ノ森章太郎といってもピンとこないかもしれませんが、仮面ライダーや戦隊シリーズは知っていると思います。早いもので石ノ森先生が亡くなられてから、26年がたちましたが、今でも映画で「シン・仮面ライダー」が作成されたり、テレビでの仮面ライダーシリーズやゴレンジャーから始まる戦隊シリーズなどの放映が続いていたりで、その作品の影響力は健在です。特に等身大のヒーローものは、巨大ヒーローもののウルトラマンと並び、子ども達に絶大な人気を誇り、現在まで50年以上続いているのがすごいです。彼は生前、マンガというメディアが持つ無限の可能性を提唱する「萬画宣言」を行い、自身も「漫画家」ではなく「萬画家」と称しました。この「萬画」という言葉には、「あらゆるものを表現でき、あらゆる世代の嗜好に合い、無限の可能性をもつメディアであり、そしてミリオンアートである」という意味が込められているのです。『石ノ森章太郎萬画大全集』は、770タイトル全500巻で、一人の著者が描いたコミックの出版作品数が世界一多いとしてギネスブックにも認定されています。手塚治虫先生の業績も超人的で「漫画の神様」と呼ばれていますが、石ノ森先生も、SF漫画から学習漫画まで幅広い分野で作品を量産し「漫画の王様」「漫画の帝王」と評されています。私が実際に読んだ作品には『サイボーグ009』『仮面ライダー』『人造人間キカイダー』『イナズマン』『ロボット刑事』『秘密戦隊ゴレンジャー』『佐武と市捕物控』『マンガ日本経済入門』『HOTEL』などがあります。

 私が初めてコマ割りをして16ページの漫画を描いたのは小学3年生の時でしたが、題材はテレビの仮面ライダーでした。ペン入れやホワイト、トーン貼りなどはもちろんなく、サインペン1本で描いたもので拙いものでしたが、セリフとコマ割りをテレビのシーンを思い出しながら描きました。今でもよく覚えています。当時は、漫画は低俗なものという偏見もあり、特に父親からはいい顔をされず、描いていると怒られました。今や紙ベースでもWebでも漫画があふれており、日本のクールなサブカルチャーとして世界に発信されているのですから、時代は変わったものです。漫画の表現力は進歩し続けていますが、果たしてAIが代替してしまう時代がくるのか、絵や音楽、文学などすべての表現者にとって今までとは全く異なる時代が到来するかもしれません。皆さんも、今後はAIに代替されないもので勝負するか、AIを活用することで勝負するか、いずれにせよ自分の様々な力を伸ばせるよう努めてください。

主体的に余白を作ろう!

 「キャリアガイダンス」というリクルートの進路指導・キャリア教育専門誌がありますが、その449号の特集が「余白を生む未来」でした。片づけコンサルタントとして有名な近藤麻理恵さんのオープニングメッセージに次のような言葉がありました。

 「いつか時間の余裕ができたら、自分にとって大切なことに時間を割こう」と思っていても、永遠にその時間はやってきません。今の自分を見つめなおし、自分にとって本当に大切なものとそうでないものを分けて、いらないものを手放す。手放して初めて、そこに自由に使える余白ができます。余白とは、人生を主体的に選択すること、すなわち「片付け」から生まれるものなのです。

 彼女は、残したいものを選ぶ基準に「手に取った時にときめくか」と表現し、片づけ本が世界的ベストセラーとなりました。2015年には、『TIME』誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出されました。「断捨離」が流行語に選ばれたのが2010年、ミニマリストは2015年ですが、いかに現代人が物に囲まれ整理ができていないかがわかります。令和4年6月24日のブログで、整理整頓について書きました。時間や空間に余白を生み出す。頭の中にも余白を生み出す。「余白の美」についても以前に書きましたが、書道や水墨画などで、何も書かれていない場所に何が見えるか。その意味が捉えられるか。アウトプットとインプットについて、インプットばかりしていると頭の中が整理できずにごちゃごちゃでいっぱいになってきます。新しく必要なことをインプットしていくためには、情報を整理してまとめてアウトプットし、余白を作る必要があります。パソコンのハードディスクをデフラグして整理して空きスペースを作るようなものですね。「時間がないと言って、好きなことを後回しにする人は、本当はそのことが好きではないのだ」ということを以前に書きましたが、余白を主体的に作るのは自分自身です。余白ができれば、余裕が生まれます。「人には余裕というものがなくては、とても大事はできないよ」という勝海舟の言葉を以前に紹介しましたが、皆さんも主体性を身に付けることで余白を生み出し、社会に出て大事ができるようになってください。