日誌

榎本校長のつぶやき

IQ、EQ、AQって?

 数年前から、GRIT(困難に直面してもやり抜く力)とかレジリエンス(逆境から回復する力)について書かれたビジネス書が売れています。皆さんは、今までに困難や逆境と呼ばれる状況に直面した時にどうやって乗り越えてきましたか。面接でよく聞かれる質問ですね。人生で出会う困難について述べた言葉はたくさんあります。「艱難汝を玉にす」(多くの困難を乗り越えてこそ立派な人間になるという意味)という言葉がある一方で、「三十六計逃げるに如かず」「逃げるが勝ち」という言葉があります。『逃げるは恥だが役に立つ』というドラマが少し前にヒットしましたが、今、自分が置かれている状況にしがみつく必要がなければ、さっさと自分の得意なことが活かせる場所に行こうという意味のハンガリーのことわざだそうです。超えるべき目標が高いことをハードルが高いと言いますが、「ハードルが高ければ下をくぐれば簡単だ」と言った人もいました。渋沢栄一は、「逆境に立たされる人は、ぜひともその生じたる原因を探り、それが『人の作った逆境』なのか、それとも『人にはどうしようもない逆境』なのかを区別すべきである」と言っています。対処しがたい逆境にあっても「これが今の自分に与えられた役割だ」と腹を決めれば自ずと心穏やかに、しかし本気で頑張ることができるというのが渋沢さんの考え方でした。逆境を、むしろ面白がる、楽しむという考え方もあります。作家の吉川英治さんは「登山の目標は山頂と決まっている。しかし、人生のおもしろさはその山頂にはなく、かえって逆境の山の中腹にある」と言っています。「世の中は、思い通りにいけばラッキーだ」くらいに達観していれば、戦争や自然災害や病気のような自分ではコントロールできないよほどのことがない限り、困難も逆境もないと考えられます。そうすれば目の前の仕事に必要以上に気負わずに心穏やかに取り組むことができるはずです。「しゃーないなー(仕方ないな)」という言葉を、私は時々使いますが、これは諦める意味の言葉ではなく、「やるしかないか、頑張ろう」という言葉が後に続く言葉です。「大丈夫!なんとかなる!」という話を以前にしましたが、たかが逆境と捉えて前向きに取り組むことで、うまくいくことも増えるのではと考えます。            

 人の能力を測る指標には色々なものがあります。その一つとしてIQ(知能指数)はよく知られていますね。基準値が100で、130以上が非常に高い知能とされています。かつてはIQさえ高ければ「頭がいい」と判断されてきましたが、人間のすべての能力を測れるほど万能なテストではありません。他にEQ(心の知能指数)やAQ(達成指数」や「成就指数」もしくは「逆境指数」)などが開発されました。EQが重視するのは対人関係能力です。EQを伸ばしていけば、自分の感情と上手く付き合うことで前向きな行動ができたり、相手の状況をくみ取って配慮することができたりするとされています。AQ(達成指数」や「成就指数」)は、IQの研究が進むにつれ、IQが学習状況や住まいの環境によって変動する事が分かってきたため、「その子の現段階の知能に対して、学校教育はどれくらいの到達度にあるのか?」を測るために考えられました。そして、もう一つのAQ(「逆境指数」)ですが、これは逆境に対する反応を表す指数です。低ければ逃避し、高ければ解決したり、成長の糧にしたりする傾向があるということです。IQやEQに次ぐ新たなビジネス成功のための指標として、注目されるようになってきました。学校において「非認知能力」の育成が目指されるようになってきたのも、よく生きていくためには学力だけでなく、むしろその他の能力が重要なのではないかと考えられるようになってきたからです。幼稚園や小学校の頃から、遊びや学習を通して対人関係を学ぶということは行われてきていますが、いつまでたっても対人関係の悩みが減らないのはなぜでしょうか?