日誌

榎本校長のつぶやき

授業参観日記スタート!

 6月に入ってから、先生方の授業を参観させてもらっています。本校のウェブページのトップに校長挨拶・ブログ通信というボタンがありますが、その右に「授業参観日記」というボタンを作ってもらいました。これから夏季休業に入るまでにすべての先生方の授業を見て、先生方がどのような授業をしてくれているかを綴ってウェブにアップしていきます。先生方がよい授業をしていても、外部はもとより、なかなか校内の先生方にも知ってもらう機会が少ないので、情報交換と広報を兼ねて、発信することにしました。今年の授業研究のテーマは「対話的学習活動」と「ICTの活用」です。これからの社会で生きていく上で、どのような力を身に付ける必要があるか、その力を身に付けてもらうためにどのような授業をしたらよいのか、日々悩んでいるところです。「不易流行」という言葉のとおり、教育の本質は変わらないとしても、時代が変われば、必要に応じて変わるものも出てきます。一人1台端末の活用もそのうちの一つでしょう。高校の教師にとっては専門科目の授業が「命」のはずなので、最も力を注ぐべきものです。しかし、実際には、授業以外にHR経営や校務分掌の業務、部活動指導、その他にも多くの業務があり、授業研究や準備にかけられる時間が十分とれているとは決して言えません。それでも、生徒の皆さんに自分が教える科目を好きになってもらって、できるようになってほしいという願いをもって、先生方は日々の授業の準備を一生懸命にして、教壇に立っています。授業は、先生と生徒が作り上げるライブです。教室はライブ会場です。ぜひ、みんなで盛り上がるように協力してください。

天災は忘れたころに・・・

 今日は、短縮授業で6限終了後に地震避難訓練が実施されました。日本海側、太平洋側と、最近、地震が多いですよね。北朝鮮のミサイル発射でJアラートが話題となり、沖縄の人は不安だと思います。東日本大震災から12年が過ぎ、いまだに悲痛な叫びを伴った津波の動画はネット上でたくさん見られます。

 「喉元過ぎれば熱さ忘れる」ということわざがあるとおり、年に数回は危機管理の心構えを持ち直すことが必要だと考えます。学校は鉄筋コンクリートで通路も複雑ではないので、地震や火災などに強いと言えます。本校は海や大きな川の近くでもなく、山が側にあるわけでもなく、比較的安全な場所にあります。それでも避難訓練をするということは、実際の危険に対処する以外に、どこに行ってもその場所に合った避難をできるようにすること、つまり自分の頭で考えて安全を守る行動ができるようになることが目標だからです。これから先、旅行等でどんな場所で災害に遭遇するかはわかりません。避難経路の確認と万が一の時に冷静に周りの状況を見て、落ち着いて行動できるようになってほしいのです。

 学校は、校舎は頑丈で外に出やすいし校庭は広いので、避難自体はそれほど困難なことではありません。ただ、生徒と職員全部で800名近くになりますので、パニックを起こさず落ち着いて避難しないと、階段や通路で将棋倒しになって、地震や火災以外の面で怪我をする危険性があります。冷静に迅速に避難できるかが、どんな災害の場合でも求められます。1分1秒が生死を分ける避難もあります。「慌てず急げ」が合言葉ですよ。

常識と非常識が逆転する日

 今日5月29日は、語呂合わせで「幸福の日」らしいですが、幸福について書こうとすると、かなり長文になりそうな嫌な予感がするのでやめておきます。
 というわけで、今日は当たり前と一般に思われていること、つまり常識を疑うことについて書きます。ユーチューブにビジネス書をボイスコミックで紹介するものがあるのですが、先日見たものに「ニュースは見るな」というものがありました。なぜ、ニュースは見ないほうがいいのでしょう?私もニュースは同じものが飽きるほど繰り返されるし、肝心なことはテレビ局に都合が悪いのか報道されないことも多いし、時間の無駄と思うことが多々あります。週末に1週間の主なニュースをまとめて見るだけで十分な気がします。ニュースは報道する価値があるからニュースになるのではなく、視聴率がとれるものをニュースにするという側面があります。コロナの報道も視聴者の不安を煽ったほうが視聴率がとれると言われました。ニュースの中で本当に報道する価値のあるものは、果たしてどれくらいあるのでしょう。若者の犯罪の増加や凶悪事件の増加、高齢者の事故の増加、外国人犯罪の増加などは、ニュースによって間違ったイメージが作られたものです。「ニュースを見た(読んだ)ほうが世の中のことがわかるからいい」という常識や思い込みを、もたされてはいませんか。
 「重役の7割が賛成するプランは時すでに遅く、7割が反対するプランくらいでやっと先手をとれる。」と松下幸之助さんは言っていますが、独創的発想、斬新なアイディア、これらは世間の常識を裏切って生まれてくるということですね。逆説的ですが常識の範疇を超えたアイデアを出すためには、まず常識を知り尽くさねばなりません。そのために学校は大事です。社会の常識を学ぶところですから。
「本当の意味で勉強するということは、常識を学ぶことではない。常識を知り、そこから外れてもいいということを学ぶことである」と言語学者の外山滋比古さんは言っています。
皆さんが、当たり前と思って少しも疑っていないことが、世の中にはたくさんあると思います。身近なところで何があるか、考えてみてください。そして、それが当たり前でなくなった先には、どんな社会が待っているのでしょう。

失敗は成功の・・・

 今年度最初の定期考査が終了しました。努力に見合った満足する結果が得られたでしょうか。中間考査初日のブログでは、成功について触れましたので、今日は「失敗」について、私が書き留めてきた言葉の中から抜粋したものを紹介します。今回の考査で、失敗したと落ち込んでいる人がいたら、よく読んでください。失敗を前向きにとらえられるかどうかが、成長の鍵です。

〇早稲田大学の創設者である大隈重信のいた佐賀鍋島藩は、藩士教育に熱心なあまり、成績不良な学生の家禄を半分にする、といった罰則まで設けていました。現代では、受験地獄がいくら厳しくても失敗すると親の給料まで半分にされてしまうというようなことはありません。それほど当時の藩の経営は厳しく、また武士たるものの責任は重かったのです。大隈重信は次のような言葉を残しています。「諸君は必ず失敗する。ずいぶん失敗する。成功があるかもしれませぬけれど、成功より失敗が多い。失敗に落胆しなさるな。失敗に打ち勝たなければならぬ。たびたび失敗すると、そこで大切な経験を得る。この経験によって、もっと成功を期さなければならぬのである。」  

〇失敗からは必ず新たな発見がある。最近は、失敗するのが楽しみになってきました。田中耕一(ノーベル化学賞を受賞)

〇失敗すればするほど幸運はくる。若い間に、いっぱい失敗して挫折してください。」山中伸弥(京都大学教授 世界で初めてiPS細胞の作製に成功し、ノーベル医学・生理学賞を受賞)

〇失敗をただの失敗と思うか、おいしいと思うかの違いなんです。失敗って視点を変えると結構面白かったりしますから」東国原英夫(元宮崎県知事)

〇「失敗したからって何なのだ。失敗から学びを得て、また挑戦すればいいじゃないか」ウォルト=ディズニー

〇そもそも失敗は、脳にとって最高のエクササイズである。失敗して痛い思いをすると、その晩、失敗に使われた関連回路の閾値が上がり、電気信号が行きにくくなる。胸の痛い失敗を重ねれば、要らない回路が消え、失敗しにくい脳に変わるとともに、とっさに余分な回路に電気信号が行かないので、本質を見抜き、勘が働く、センスのいい脳になる。

〇人が成長する上で、必ず経験しなければならない失敗があるのです。これが「よい失敗」で、別の言葉を使えば、「必要な失敗」といえます。

〇人は正解を教えてもらったら、盲目的にそれしかやらなくなります。試行錯誤をしなくなるんですね。絶対に失敗させて、試行錯誤させれば、どれだけセンスのないやつでも成功できるんです。全員失敗させて、全員成功させるんです。

いかがでしょうか。失敗を単なる失敗で終わらせるか、「勉強させてもらった」と感謝して、成長と次の成功に生かせる糧とするか。それはあなた次第です。

3.14・・・楽しめる!?

 昨日、興味深いニュースを見ました。兵庫県の西宮市立西宮高校3年の4人が「三角比の定理」などを用いて「円周率の新しい求め方」を証明し、まとめた論文がオーストラリアの国立ニューサウスウェールズ大学が発行する数学雑誌に特に注目すべき記事として掲載されました。高校までで学ぶ公式などを使って証明することは困難とされていて、新たな証明方法として評価されたそうです。研究を始めたのは彼らが1年生だった2021年9月で、身近な疑問を出発点に深く探究する授業の中で、「円の面積と内接する多角形の面積は近似する」というテーマの着想を高校受験の問題集から得たとのことです。半年ほどかけて挑んだ末、高校1年で習う「三角比の定理」などを用いて、スムーズに証明できることが分かりました。指導した先生は「私がほとんど口を挟むことなくやってのけた。円周率の証明は伝統があるが、高校生が学ぶ知識で解けたということに大きな意義がある。数学界でいうと“エレガント”な証明」と太鼓判を押しました。生徒たちは「答えにたどり着くまでの過程を導くために、自分たちなりに試すことに楽しさを感じた」「諦めないで続けていけば道は開ける、という自信につながった。これからも大好きな数学に関わっていきたい」と述べています。研究の原動力は、尽きぬ探究心だそうです。皆さんも、ぜひ探究心をもって好きなことに取り組んでください。

 さて、円周率についての話をもう少し書きたいと思います。1999年秋に某N学習塾が2002年の学習指導要領改訂をとりあげ『ウッソー!?円の面積を求める公式 半径×半径×3!?』、『円周率を3.14ではなく、「およそ3」として円の求積計算を行います』と書かれた広告を首都圏の通勤電車の中に大量に張り出すなどして大々的なキャンペーンを行いました。この衝撃的な情報は全国に広まり、マスコミによって拡散され、首都圏の学習塾の思惑(公立学校に行かせるとこんな事になっちゃいますよ。いいんですか?)を助けることになりました。そしてゆとり世代は"円周率を3として習っている"という認識が世間一般で広がってしまいましたが、この話はデマです。正確には 「円周率は3.14だが、実際の計算では3として取り扱っても良い」 ということです。これは、小学校5年で習う小数の計算では、小数点以下1桁までしか扱わなくなったことに関連しています。これに関連して2003年に話題になったのが東大理系の前期試験の「円周率が3.05よりも大きいことを証明せよ」です。メディアは、「東大がゆとり教育を否定した」などとセンセーショナルに取り上げ、もっとも有名な大学入試問題の一つになりました。興味をもった人は、ネットでたくさん取り上げられていますので考えてから解答を見てみてください。3.14がどんな数字なのかを考える人と単に円周率として覚える人では、学年を重ねるごとに数学だけでなくすべての学習で大きな差がつくことでしょう。

 そのほか円周率に関するトピックでは、2019年3月14日に、グーグル社で日本出身の岩尾エマはるかさんが、円周率を小数点以下31兆4000億桁まで計算することに成功したことや、19世紀末のアメリカのインディアナ州で円周率を3.2という間違った値に勝手に決める内容を含んでいる法案が通りそうになったことなどが、興味深いです。円周率がアバウトだと失敗してしまう国家プロジェクトもあります。日本の小惑星探査機はやぶさの軌道計算には「3.141592653589793」が使われましたが、もし「3.14」を使っていたら最大で約15万キロも軌道がずれてしまう可能性がありました。日本には円周率11万桁を覚えた世界記録保持者原口證さん(77歳)がいますが、原口さんは意味のない数字の並びである円周率に、独自の語呂合わせで770以上の物語を作り、記憶しています。最後に彼の言葉を紹介します。

「『実行八分目』が大切。精一杯頑張ったら、翌日は疲れてやりたくなくなる。でも、物足りなさを残してやめておけば次の日も楽しみながら実行できる。その繰り返しが、継続へとつながるのです。目標も決して定めない。達成しなければという義務感が生じ、つい頑張ってしまうから。頑張りすぎる→苦しむ→目標に届かず挫折、という悪循環に陥ってしまいがち。「大事なのは続けることではなく、続けられること。肝心なのは、楽しくやることではなく、楽しくやれること」 

『論語』にある孔子の言葉「之れを知る者は、之を好む者に如かず 之を好む者は、之を楽しむ者に如かず」が思い出されました。「学ぶことにおいて、その知識を知っているだけの人間は、勉強を好きな人間には及ばない。勉強を好きな人間は、勉強を楽しんでいる人間には、及ばない。」何かをできるようになりたかったら、楽しんでやるのが1番!ということですね。「楽してやる」ということではなく、「真剣に、でも、楽しんでやれる」ということだと思います。何事も楽しんでやれる工夫ができるかどうかですね。